『天国にいちばん近い島』~森村桂さんの作品との出会い

『天国にいちばん近い島』~森村桂さんの作品との出会い

私が森村桂(もりむらかつら)さんの本に出会ったのは、まだ小学校の頃です。

夏休みに図書館に行き、もう帰ろうと出入り口近くの棚に一冊の単行本が無造作に置かれていました。

その頃は、まだ小説を読むなんて気持ちはさらさら無い頃でしたから、
そんな地味な単行本など興味を示すはずなど無かったのですが、あまりにタイトルが印象的だったもので、
つい手にとって眺めてしまいました。

小説のタイトルは『天国にいちばん近い島』。
小説の内容は知らなくとも、このタイトルは耳にしたことがあるのではないでしょうか。

森村桂

その後、ニューカレドニア島への旅行のキャッチコピーとなり、映画のタイトルにまでなった言葉です。

その頃の小説は文字数がやけに多くて、文字自体も小さい子供には読みにくい難しいものでしたが、
この本は小説にしては文字数が少なくて内容もわかりやすくて小学校の子供であっても十分理解できる本であったのを覚えています。

図書館の出入り口で立ったまま『天国にいちばん近い島』を読んでいる小学生の私。

でもさすがに全部は読みきれず、大まかにだけ読んで再び棚に戻し家に帰りました。

何となくですが、感動しました。

それまで小説とは、作家が考えた物語を書いたものだとばかり思っていましたが、
森村桂さんの書いたものは、自分の人生でした。

作家である父親はすでに亡くなり、母と二人暮らしで大学を卒業したものの就職も上手くいかず、
ふとしたことでニューカレドニアの存在を知り、それは地球上で一番最初に朝日が昇る場所。

それ知った彼女は、ニューカレドニアこそが亡き父が言っていた、天国に一番近い島なのだと確信するのです。

思い立てば即行動する彼女は、当時ニューカレドニアへ行くには貨物船に乗るしか方法が無くて、
船会社の社長に手紙を書くことをします。

なかなか返事が来なかったものの、忘れた時期に、了承してくれるお返事をもらい、あきらめていたのに、
と感動してニューカレドニア行きを決めます。

船の中での船員達との語らいや、ようやく島に着き、これから楽しい旅が始まるのか、と本人は期待しますが、
当時観光地でも無いニューカレドニアに若い女性が一人で来るなど企業スパイではないか、
と疑われ同じ日本人からも不審の眼で見られるなど、思うようにことは進まないのです。

けれど、日本を始め統治しているフランスや白人達のような文化的な生活をする人たち以外の原住民達と徐々に親しくなっていき、
友情を深めていきます。

そこで林氏やワタナベ氏と出会う、特にワタナベ氏との友情はこの物語に欠かせない。

森村さんが何気なく、ワタナベ氏にボンジュールの言葉をかけたことから、ワタナベ氏は森村さんに好意を抱き、
何かしら力になってくれる。

それというのも、彼は日本人とフランス人の母との混血で、
軍隊にまで行ったのにフランスの国籍も日本の国籍ももらえず無国籍の人であった。

それまで日本人に気軽に挨拶などされたことが無かった彼は初めてボンジュールと声をかけてもらっていたく感激し、
これ以降森村さんの力になってくれるのです。

その辺のお話は涙が出るほどの感動物です。

フィクションではなく、実際のお話でこれだけ感動できる体験ができる森村さんは特別な星の元に生まれたとしか思えません。

そして、その後に旅行会社で偶然見たニューカレドニアのキャッチコピーを見て驚きました。

そうです、「天国にいちばん近い島」と大きく書かれていて、これは森村桂さんの言ってた言葉、
そして後に映画化にもなったのです。

偶然立ち読みしたことで、森村桂という作家は私の中で強い印象を残しました。