『愛という魔法のお菓子』~面白くて悲しい作品

『愛という魔法のお菓子』~面白くて悲しい作品

森村桂さんの通っていた学校は学習院で、皇室の方々が通う学校です。

そのためか皇室の方々と交流がありました。

詳しい経緯は知りませんが、現在の皇太子様の結婚式のとき、
ウェディングケーキを森村さんが作っていたのは有名な話です。

テレビで私も偶然見ましたが、スポンジケーキの種を手でこねていたのにはびっくりしました。

しかし、私は森村さんらしいと思いましたし、いかにも美味しそうなケーキができそうにも見えました。

森村さんはお菓子が大好きなだけでなく、ケーキ作りも大好きでした。

お得意のケーキはパウンドケーキで、当時は日本の粉はうどん粉だから、美味しいケーキには向かないらしいのです。

だから、森村さんはフランスの粉を使っていました。

ケーキにだけ特別にナポレオンなどの高いお酒を使うなど、ケーキを美味しくするこだわりは特別もってもいました。

それは、森村さんが得意とするお菓子を小説の題材にに使うほどでした。

タイトルは『愛という魔法のお菓子』。

いつも自分の身近な出来事を小説化する森村さんにしては、珍しく物語り風なつくりでした。

面白くて悲しい本

でも、その本の内容は森村さんがもし、今の旦那様と結婚していなければ、他の男性と結婚していたらどうなったか、
と、森村さんが想像したものを書いたような感じでした。

ここに出てくる旦那様とは元夫の山下ジロウ氏です。

物語の最初は山下ジロウ氏がケンカして出て行ってしまい、残された桂さんはさび付いたオーブンでお菓子作りをはじめます。

お菓子が焼き上がりオーブンを空けた瞬間、森村さんは、昔好意を持っていた男性と再びめぐり合い
プロポーズされて結婚するのですが、最初は上手くいって幸せになるか、と思えばいつの間にか結婚生活が駄目になっていきます。

それは初恋の人であったり、学生運動をしていたボーイフレンドであったり、昔告白してくれた人であったりと、
複数の男性との結婚を次々行うのですが、家柄の違いで夫の実家でいじめられるとか、
自分を理想化していたボーイフレンドが実際に結婚してみれば興ざめするとか、
石油王となった彼には自分以外の妻がいたとかどうにも上手くいかない結婚生活で。

そして最後に山下ジロウ氏が現れます。

最後にはやっぱり貴方が一番という締めくくりで終わります。

これは森村さんが離婚した最初の夫である山下ジロウ氏とまだ婚姻中の作品です。

一見夫婦喧嘩は犬も食わないお似合いの夫婦を描いているようにも見えます。

しかし、最初のくだりの二人のケンカは、山下さんが森村さんの作る料理に文句をつけますが、
それは妻が小説を必死で書いていているのを嫉妬してるからだといいます。

山下さんは異常に嫉妬深く、それは森村さんの仕事に対しても嫉妬し、だからといって森村さんが仕事しなかったら、
また良くない、という大変やりにくい人だったのです。

森村さんは、当時山下さんの怒りを買わないよう気をつけながら執筆していたと聞きます。

離婚してからそのことを知り、ああ、あの違和感はそのためだったんだ、と私は思いました。

だって小説家の仕事をしている妻に嫉妬して食事に文句をつけてケンカをけしかけるなんて
あまりにも子供っぽいというかやりたい放題というか。

冷静に考えるとあんまりな夫でした。

しかし、それでもそばにいてほしい森村さんはこのようにまとめるしかなかった。

『愛という魔法のお菓子』はとても面白い作品なのですが、それを知ってしまうと悲しくもある作品です。