森村桂さんの「世界で一番美味しかったケーキ」とは…?

森村桂さんの「世界で一番美味しかったケーキ」とは…?

森村桂さんの本の多くにお菓子の話が良く出てきます。

森村桂さんはお菓子が大好きで、特に洋菓子好きなのです。

だから甘いお菓子好きな人にはぜったいにうれしい本でした。

森村さんの本が沢山売られている時代は、お菓子について書かれている本などあまり見かけない時代でしたから。

かく言う私も甘いお菓子が大好きだから余計に彼女の本を買いあさりました。

森村桂さんの本ではお菓子に対する愛情が本当によく感じられます。

たとえばケーキを最高に美味しく食べるには最高のタイミングが大事、それは出来立てすぎでも置きすぎでもだめです。

美味しく食べられる絶妙なタイミングでケーキを食べると最高に美味しい瞬間に出会える、そのようなお話が山ほど出てきます。

森村さんの考えでは、美味しいケーキには魔法がある。
その人によって、それは幸運をもたらしたり、または不幸をもたらすこともある。
美味しさの中に危険さえ存在するケーキは魔法の食べ物。

…森村桂さんだからこその独特の世界観です。

いろんな美味しいケーキを食べたいと考え、外国までいって食べ歩きツアーをして満喫するのですが、
しかしどんなに美味しい世界中のケーキを食べ歩いても、森村桂さんの中で一番美味しかったケーキは、日本にありました。

それは、彼女の父親がまだ存命の頃、売れない作家時代に久々に来た仕事があり、
彼女はその仕事で得たお金でしばらくは困らないで一家が暮らせると喜びました。

それというのも、一家の生活費は父がまかない、母親は生活費を稼ぐどころか、
お金が入るとすぐに散在してしまう癖がある主婦失格な母親でした。

だから、森村桂さんは子供ながらに森村家の家計を常々心配する癖ができていました。

そんな彼女の心配をよそに、父親は仕事でいただいたお金の多くでケーキをお土産に買って帰りました。

当時ケーキといえば、かなりの高級品で、父親としてはたまの贅沢を味あわせたい気持ちだったのでしょう。

しかし、森村桂さんの気持ちは怒り心頭で、

「何でこんなもの、今回の仕事のお金があれば一週間は食べる心配がいらない」

と父親に対して怒りをぶつけてしまいます。

でも父親も母親もたまにはいいじゃないか、の態度でした。

結局怒りながらも桂さんはケーキを食べます。

その場で決して美味しいと口には出しません。
そりゃ高いんだもの、美味しくて当然よ、と憤慨しながら食べました。

けど、それからお菓子を求める旅が始まったと森村桂さんご本人はいいました。

あのときの父親が買ってきてくれたケーキを超える美味しさのケーキに桂さんは出会ったことが無いのでした。

だってあのときのケーキは父親が家族のためを思って買ってきてくれた愛情あふれるケーキだったから、と彼女は思うのでした。

それでも、それ以上に美味しいケーキに出会いたい!
彼女はそう思い、次こそは出会えるかも、と期待しつつケーキを食べ歩いていたに相違ありません。

世界で一番美味しかったケーキは